【さらに詳し知りたい人のための解説】
最小の素材から最大の空間を
数学者、建築家、発明家、思想家とさまざまな肩書きをもつバックミンスターフラーは、地球を生命が暮らす有限の空間と考え「宇宙船地球号」という言葉を広めた人として知られています。未来の建築のありかたや、くらしのデザインについて深い洞察をおこなったフラーは、最小の資源から最大の効果を生み出すための数々のアイデアを提案しました。フラーの幾何学理論と思想的な背景を知るうちに、私たちは彼の魅力に引き込まれていきました。軽くてどこにでも持ち運べる新しい住まい。誰もが自分だけの空を手に入れることができる空間。身近な素材からそんなすてきなドームは作れないだろうか。
フラーが提案したドームは美しい半球です。その立体は複数の小さな平面を組み合わせて構成されています。しかし、それには球面を平面におきかえるための複雑な計算が必要でした。そこで私たちはもう一度原点に立ち返って考えなおすことにしました。球面のままで計算すれば、もっと単純な原理でドームは作れるはずだ。
なんども試作をくりかえしながら十分な強度と安定性をもつドームの設計に頭を悩ませていたちょうどそのころ、国立民族学博物館で開かれていた「マンダラ展チベット・ネパールの仏たち」のなかに大きなヒントが隠されていました。須弥山を中心に展開する仏の世界、幾何学模様を繰り返す曼陀羅と呼応するように、新しいドームのイメージが突然浮かび上がったのです。
天頂に輝く星とそれを取り巻く五連星
これこそ求めていたドームでした。半球を3等分した点がそれぞれ星形の頂点になるようにフレームを組み合せてみましょう、すると正20-12面体の頂点を結んだ位置にきれいな星が出来上がります。それは、とてもシンプルでバランスがとれたドームでした。こうして2003年7月、ついに6つの星を持つスター★ドーム(星天蓋)が完成したのです。
九州フィールドワーク研究会では、多くの人にスター★ドームが生み出す美しい空間を体験してほしいと願い、このスター★ドーム公式サイトを作成しインターネット上で情報を公開しています。
スター★ドームは竹資源の有効利用だけにとどまらず、人類の新しい生き方を志向するものであってほしいと私たちは考えています。重厚長大な思想ではなく、かるくしなやかな思想。定住ではなく遊動のくらし。フラーが夢見ていた未来の姿を「ほら、『きみだけのそら』がそこにあるよ」とスター★ドームが教えてくれるはずです。
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